サッカー

日本クラブユース選手権(U-18)大会こそ夏の祭典である

関東甲信では7月16日に梅雨明けし、じりじりと焼ける強い日差しのもと、夏本番を迎えることとなった。

学生の方にとっては待ちに待った夏休みに突入し、冷房の利いた部屋で涼しみながらダラダラと過ごすも良し、寝食を忘れて好きなことに没頭するも良し。

または受験に備え、夏期講習で勉強漬けの日々を送る方もいるだろう。

でもクラブチームに所属する高校生たちにとっては7月25日から日本クラブユースサッカー選手権大会が始まるため、サッカーと向き合う日々になる。

 

日本クラブユースサッカー選手権とは

この大会は1977年から開催されている高校生年代のクラブユースのチームによる日本一を決める大会になります。

通年で行なわれている高円宮杯プレミアリーグやプリンスリーグなどはクラブチームと高体連(いわゆる部活チーム)の垣根を越えて対戦していますが、サッカーの高校生年代で夏の大会においてはそれぞれに分かれて戦うことに。

高体連の場合は全国高校総体(インターハイ)、クラブチームの場合は日本クラブユースサッカー選手権という2つの大会が行われることになります。

大会の概要

今年の大会は地域予選で高円宮杯プレミアリーグEAST所属の柏レイソルU-18、J1のアカデミーでいうと湘南ベルマーレU-18や徳島ヴォルディスユースなどが敗退。

全国大会は群馬県内を舞台に7月25日(日曜)に開幕し、各地域大会を勝ち抜いた32チームが8グループに分かれてグループステージを戦い、各グループの上位2チームずつが決勝トーナメントに進出し、抽選によって組み合わせを決める。

決勝は8月4日に正田醤油スタジアム群馬で行なわれます。

なお、世情を考慮して無観客開催となっていますが、全試合をLIVE配信する予定です。

出場チーム

北海道

北海道コンサドーレ札幌U-18

東北

ベガルタ仙台ユース / モンテディオ山形ユース/ ブラウブリッツ秋田U-18

関東

横浜FCユース / 横浜F・マリノスユース / 大宮アルディージャユース/ 浦和レッズユース / 川崎フロンターレユース / 鹿島アントラーズユース/ ヴァンフォーレ甲府U-18 / ジェフユナイテッド千葉U-18 / FC東京U-18 / 東京ヴェルディユース / 三菱養和SCユース

北信越

ツエーゲン金沢U-18 / カターレ富山U-18 / アルビレックス新潟U-18

東海

清水エスパルスユース / 名古屋グランパスU-18 / ジュビロ磐田U-18

関西

ヴィッセル神戸U-18 / 京都サンガF.C. U-18 / ガンバ大阪ユース / セレッソ大阪U-18

中国

サンフレッチェ広島F.Cユース / ファジアーノ岡山U-18

四国

カマタマーレ讃岐U-18

九州

サガン鳥栖U-18 / V・ファーレン長崎U-18 / アビスパ福岡U-18 / 大分トリニータU-18

大会日程

7月25日(日)グループステージ第1日
7月26日(月)グループステージ第2日
7月27日(火)休息日
7月28日(水)グループステージ第3日
7月29日(木)ラウンド16
7月30日(金)休息日
7月31日(土)ラウンド8
8月 1日(日)休息日
8月 2日(月)準決勝
8月 3日(火)休息日
8月 4日(水)決勝

大会プレビュー

同時期に行われる東京五輪やインターハイに比べれば注目されにくい大会ではありますが、7月25日から8月4日までの11日間という短期間の行方とともに選手たちの成長にも注目していただきたいです。

実力者がたくさんいる大会で、過去を振り返れば、大迫啓介、冨安健洋、堂安律など、この舞台を経験し、日本代表まで駆け上がっていった選手も少なくありません。

苦しい夏を経験したことでグッと伸びたと耳にする機会も多く、その後のトップ昇格の最終判断の材料にされることもあるため、人生を左右する大会とも言えます。

試合自体の楽しみもさることながら、国内有数の酷暑地域である群馬の暑さや連戦による疲労との戦いが、この大会のポイントの1つになります。

公式記録に気温42.0℃と記載されていたこともあり、暑いと口する気さえ起こらないほど灼熱の中で行われるため、熱中症により嘔吐して一時離脱する選手が発生したこともありました。

そのため、暑さ指標(WBGT)を使用するのが今や一般的となり、JFAもこれに準じたガイドラインを策定し、クーリングブレイクをはじめ、試合時間の短縮、予防法の周知など酷暑対策を講じています。

ただ決して精神論を振りかざすつもりはありませんが、日本、アジアでサッカー選手として生きていくのであれば「暑さ」は避けられない問題ですので、その環境にどれだけ適合し、どういうプレーをするのか、に目を向けたほうが良いと思います。

動きの効率化を図るのか、ポゼッションを高めて消耗を避ける時間を作るのかなどチームとしての狙いもそうですし、選手個々に目を向ければ暑かったら動けないのか?キツかったら何もできないのか?

そうした中でも何か他と違いを見せれる、そういう選手になっていかないと上では通用しないと思っているので「苦しい時に何ができるのか」が問われます。

心身ともにタフさが求められる中で、将来を賭けて熱く戦う姿に注目してもらいたいです。

一昔前であれば全国大会と言えども大量得点によるワンサイドゲームがありましたが、近年は首都圏や地方に関係なく各チームが力をつけてきたため「ラクな試合」というのがなくなってきました。

所属カテゴリーだけを見れば、この年代の最高峰であるプレミアリーグを頂点に上から数えて2部に該当するプリンスリーグ、3部に該当する都道府県リーグとなり、組み合わせによっては1部vs3部という対戦カードもあります。

ですが、前年度以前の戦績によって所属するリーグが決まるため、「今年の強さ」を反映してるわけではないので、ここぞとばかりに自分たちの力を証明すべく、下部リーグに所属するチームにとってはまさに特別な舞台であり、下剋上の意識は高まるばかりです。

過去5大会は全てプレミアリーグに所属するチームが優勝していますが、マリノスユースが優勝した2015年、2013年は当時プリンスリーグに所属していたため、改めて現所属リーグに関係なく、どの試合もギリギリの接戦が繰り広げられることが期待できます。

 

横浜F・マリノスユース

ということで、ここからはマリノスユースに特化したクラブユース選手権のプレビューになります。

今年はかつてセレッソ大阪U-18を率いていた大熊裕司が新監督に就任し、体制こそ変わったもののチームとしてのコンセプトや方針は変更することなく、プレミアリーグEASTという舞台で戦っています。

選手によって出場時間にバラつきはあるものの全41選手中22選手がこの年代における最高峰の舞台を経験する中、ここまで8試合を戦い、4勝3敗1分の10チーム中3位という戦績。

球際の激しさやプレー強度が求められる中、トップチームのサッカーにできるだけ近い形でやることで、トップの練習に参加した際や昇格後にすぐ馴染めるよう今だけでなく常に先を意識しながら目の前の課題と向き合っています。

またプレミアリーグ、言わばAチームの試合には出場できていないとしてもそれとは別にBチームというものが存在し、現在神奈川県の2部リーグ(実質4部)に所属しているため、それによって多くの選手が公式戦を経験することができ、チームの底上げを図っています。

また、今年より新たに始まったエリートリーグを活用することでトップチームの選手とともに試合する機会もあり、普段のリーグ戦とは違う刺激を受ける中、ここまで順調と言えば順調と言えるシーズンを過ごしてきました。

そうした中で心機一転、日本クラブユース選手権というカップ戦に臨むこととなります。

育成年代において過去の成績というのはあまり重視すべきものではないですが参考程度に近年の成績を紹介しますと

2020年BEST8
2019年3位
2018年グループステージ敗退
2017年BEST8
2016年BEST16
2015年優勝

 

今回、マリノスユースとグループステージで対戦することになったのは、東京ヴェルディユース、北海道コンサドーレ札幌U-18、アビスパ福岡U-18。

北海道コンサドーレ札幌U-18、アビスパ福岡U-18と聞いて勘の良い人は気付いたことでしょう。

トップチームに続き、今年は同大会でアカデミーにおけるマネフォダービー(㈱マネーフォワード・ダービー)が実現されます。

ということで各チームのファン・サポーターはこれを機会にスポンサー様がアカデミーにも興味関心を持ってもらうよう、積極的にアピールしていきましょう!

所属しているカテゴリー

横浜F・マリノスユースプレミアリーグEAST
東京ヴェルディユースプリンスリーグ関東
北海道コンサドーレ札幌U-18プリンスリーグ北海道
アビスパ福岡U-18プリンスリーグ九州

マリノスユースが頭1つ抜けている感じがして2位争いが熾烈というのが下馬評だが、見方を変えればマリノスユースから勝ち点を獲ることができれば、その分だけ決勝トーナメント進出の可能性が高まるとも言えます。

ですので、変に構えてたり受け身にならず、手綱を緩めずにしっかりと勝ち点を得たいところです。

北海道コンサドーレ札幌U-18

普段アカデミーを見てる者からしたら所属するカテゴリーや地域が違うにも係わらず「また、お前か!」というほど、よく対戦しています。

2021年日本クラブユース選手権 同グループ←NEW
2020年
2019年プレミアリーグ 昇格戦
2018年Jユースカップ 準々決勝
2017年
2016年
2015年日本クラブユース選手権 同グループJユースカップ 3回戦
2014年
2013年日本クラブユース選手権 同グループ日本クラブユース選手権 準々決勝
2012年日本クラブユース選手権 同グループ

また、ヘッドオブコーチには日産時代や1995年にマリノスに選手として在籍していた財前恵一、トップチーム兼アカデミーコーディネーターには2004年~2006年までマリノスのGMをしていた小山哲司

一方、マリノス側から見ても今季、日本工学院F・マリノスの監督をしているのは川口卓哉

2003年にコンサドーレ札幌に選手として在籍し、末に現役引退すると翌年から同チームのアカデミーで指導者としての道を歩むこととなり、2015年夏から2018年までU-18の監督。

マリノスユースのコーチに金子勇樹

2004年8月から2007年までコンサドーレ札幌に選手として在籍。

そんなわけで何かと縁のあるチームです。

注目選手

1人目は、FWの佐藤陽成(3年生)

当時、稚内の中学に在籍していたところをスカウトされ、コンサドーレ札幌U-15に移籍。

年代別の代表にも選出、昨年と今年はトップチームの試合にも出場できる二種登録をされ、天皇杯に出場。

今季のU-18ではRHで出場する機会もありゲームメイクもしていますが、もともとは一瞬のスピードとゴール前でのターンを得意とする点取り屋の選手です。

もう1人は、CBの西野奨太(2年生)

こちらも二種登録されていて、身長179㎝とCBとしては決して上背があるとは言えませんが的確なカバーリング能力が冴えわたり、また足元があって最後尾から攻撃の起点にもなりえる近代的な選手です。

アビスパ福岡U-18

監督を務めるのは山崎哲也

現役時代はディフェンダーとして活躍し、1999年から2004年と2008年に大分トリニータ、2005年から2007年はセレッソ大阪に在籍。

現役引退後は大分トリニータで指導者としての道を歩んでいましたが、今シーズンよりアビスパ福岡U-18の監督に就任。

これにより、昨年までとはスタイルを変えてポゼッションを試行しているとか…

注目選手

1人目はCHないしSHの藤原尚篤(3年生)

今季はSHでプレーしているようですがCHとしての印象が強く、1年生の時からチームの司令塔として活躍し、2019年のJユースカップではBEST4の立役者と言える。

身長164cmと小柄ながら圧倒的な足技と相手の逆を取る感覚に優れているため、攻撃での存在感は抜群な選手です。

もう1人は、FWの山根顕星(3年生)

今季リーグ戦7試合を戦い、チーム総得点14のうち半数近くの6得点をマーク。

ゴール前での強さや落ち着きが印象的で、優れた得点能力を持ち合わせているストライカーです。

東京ヴェルディユース

監督として同チームを率いるのは中後雅喜

現役時代は鹿島、千葉、C大阪、東京Vで活躍し、2017年限りで現役を引退、翌年から指導者へ。

中後雅喜、山崎哲也、その他でいうと鹿島アントラーズユースの柳沢敦だったり、長年Jリーグを見てる者からすると2000年代に活躍していた往年の名選手が時を経て指導者として現場に戻ってきているのは育成年代を見る上で楽しみの1つでもあります。

注目選手

SHの橋本陸斗(1年生)

今季のJ2開幕戦に出場したことで、Jリーグ史上3番目の年少記録、J2では最年少記録保持者です。

ジュニアユース時代から飛び級でユースの試合に出場していて、4月にプロ契約をした左利きのドリブラー。

他にも現役時代は主に磐田でプレーし日本代表でも活躍した福西崇史の息子である福西翔太や世代屈指の司令塔である西谷亮を始め、原圭佑尾又雅仁吉原悠真根本鼓太郎岩崎壮真と計8選手が二種登録されています。

まとめ

日本クラブユース選手権は全国から集まったクラブチームがしのぎを削る夏の祭典である。

トップチームへの昇格が予想される選手や大学を経由する選手を含めて将来のプロ候補は数多く、タレントの宝庫と言える大会。

そんな彼らが「日本一」を賭けて戦うのだから面白くないわけがない。

最後に笑うのは1チームのみだが、今年は群馬県内のみで開催するため、勝ち進めばその分だけ遠征期間が伸びることになる。

つまり同じ目標に向かって仲間と過ごす時間も増える。

想いを共有し、勝利への執着心をもって暑さに負けないほどの強い気持ちで臨んでくれれば、画面を通してでも見ている者の心に響くものは必ずあるだろう。

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